HOME > JI本誌より > ji52号(2007年1月号) > 企業価値で株の割安度を見抜け! 山口揚平
企業価値で株の割安度を見抜け! 山口揚平
株を安く買うことの本質がわかれば儲けのチャンスを膨らませられる
株式投資に限らず、ビジネスの世界においても、「安く買って、高く売る」ことが、儲けるための基本です。著書『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』で、「株の"価値"を知ることが株式投資で失敗しないコツ」という提案をしている山口揚平氏(ブルー・マーリン・パートナーズ代表)は、「株で儲けようと思ったら、まず『株を安く買う』とはどういうことかを理解する必要がある」と言います。
安く買うとは、単純にいえば、その株の本来の「あるべき価格」よりも安く仕入れるということ。株価が上昇トレンドにあって目先株価が下がっているとか、PER(株価収益率)が業界平均より低いとか、PBR(株価純資産倍率)が1倍割れしているとかで、その株が「安い」と判断するわけではありません。山口氏は、この本来「あるべき価格」のことをその株の「価値」と呼んでいます。いくら中長期投資といっても、実際に特定の銘柄を保有していると、どうしても目先の株価の動向に目が行きがちですが、その際にも「価値」をしっかり理解していれば、落ち着いて的確な投資行動をとることが可能でしょう。多くの素人投資家がやみくもに株価を追いかけて損をしているときでも、損を出さないばかりか、価値あるものを安く手に入れて、儲けのチャンスを膨らますことも十分可能なのです。それでは、山口氏がいうところの「安い株」(=割安株)とはどんなものか、具体的に考えていきましょう。
では質問です。現在、あなたが保有している株は「安い(=割安)」、それとも「高い(=割高)」?「もう買ってしまったものだから、高いのか安いのかを気にしてもしょうがない。後は買い値より高くなるのを待つか、株価が変わらなくても配当や株主優待に期待すればいいんじゃないの」と言う人もいるでしょう。でもそういうスタンスでは、いつまでたっても、失敗の少ない株式投資はできません。
割安? 割高? 時価総額と株主価値がその目安
「端的にいって、その会社の"株主価値"が時価総額より大きければ割安、反対に小さければ割高、と考えます。理論的には、いずれ時価総額は株主価値と一致するはずですから、あなたの保有している株が割安となっていれば、今後、株価が上がるチャンスが十分あるということになる。もしも割高状態だとすると、株価が下がる心配があり、株価動向に注意する必要があります」(山口氏)時価総額は「株価×発行済株式数」で簡単に求めることができます。たとえば、株価630円、発行済株式数が68億株だとすると、時価総額は4兆2840億円になるわけです。
多くの方の記憶にまだ残っているかと思いますが、少し前に"時価総額経営"という言葉が注目された時期があります。「時価総額が大きければ大きいほど、株主にとってもいい会社」とする考えですが、時価総額のみに向かって間違った舵取りをすると、そういう会社がどうなるかはもうおわかりですね。2007年5月から三角合併が解禁されます。会社の吸収合併を行う際に、存続会社の親会社の株式を交付することによって行う合併のことですが、欧米企業による、日本子会社を使った日本企業の買収が可能になるということで、時価総額の大小がいままた話題になっています。なにせ、日本で業界№1の企業でも、世界のトップ企業の時価総額に比べればせいぜい数分の1程度ですから、いざ解禁されると、合併の危機に瀕するかもしれないというもっともらしい不安がささやかれてもいます。それに対して株主価値はというと、前ページの図表で示したように「企業価値」から「負債」をマイナスしたものです。企業価値は、その「企業の事業の価値」と「もっている財産」を足したものになります。
企業の価値というときに、わかりやすくするために「今後、どのくらいの利益をあげられるか」という視点で考えることが多いようですが、より正確に企業価値をとらえるならば、企業が内部に貯めている財産にも注目する必要があるのです。実際に、世の中には、事業の価値が大きい会社と、財産をたくさんもっている会社があります。山口さんが提案する株の価値は、企業を丸ごと評価した「企業価値」をもとに考えていくものです。
では、この山口さんの考え方を現在の保有銘柄にどう活かしていったらいいのか。保有している銘柄の株主価値が時価総額を上回っている、つまり割安というとき、この場合は、将来的に利益を稼げるチャンスが十分にあるということですから、「保有」を続けたほうがいいということになります。仮に含み損を抱えている場合でも、やがては時価総額が株主価値に近づく(株価は上昇する)わけですから、そのときを見越して、「へたな難平」にならない買い増しを考えることができます。逆に保有銘柄の株主価値が時価総額を下回っている、つまり割高となっている場合は、将来的に株価が下がる可能性が高いわけですから、売却のチャンスを探るのが正しい選択肢ということになります。また株主価値自体が変化することもあります。以前のような価値がなくなっているのに気づかずに、そのまま保有を続ければ投資の失敗になりますから、企業価値に影響を与えるニュースには注意を払い、その結果、企業価値がどう変化したかを確認することも大切なポイントになります。
