戦略的ERP導入コンサルティングから保守・運用までをワンストップサポート──株式会社ノムラシステムコーポレーション 代表取締役 野村 芳光
株式会社ノムラシステムコーポレーション
証券コード 3940/JASDAQスタンダード
代表取締役
野村 芳光 Yoshimitsu Nomura
企業の業務を統合管理する基幹システム「ERP」導入のコンサルティングを行なう同社。ERP分野において世界一のシェアを持つ企業「SAP」とチャネル・パートナー契約を結び、SAP認定コンサルタントの数は業界屈指。人事ソリューションでは独自のテンプレートで高収益の需要を獲得し、ERP業界の次世代を担う企業への飛躍をはかる。
取材・文/上條 昌史 写真撮影/和田 佳久
全ての業務を一つのパッケージでグローバルに統合管理
──これまでの歩みを教えてください。
野村 私はもともと三菱金属のシステム・エンジニアでした。当時、ある人から保険会社の代理店業が儲かると聞いて退社、営業を開始したのですがさっぱり儲からず、途方に暮れていた頃に、知人の依頼でプログラムの仕事を始めました。会社の設立は1986年。当初社員は私一人で、世田谷区の上馬に〝事務所兼寝床〟のオフィスを構え、ソフトウェア設計・作業請負事業をスタートしたのです。プロジェクトマネージャーの経験があったので、仕事は順調に増えたのですが、バブルが弾けて金融のシステム統合などがあり、先行きが不安になった。何かに特化した事業をやらなければ生き残れないと考え、2000年にSAP ERP導入コンサルティング事業へ経営資源を投入し始め、翌年同社のパートナー認定を受けました。そこから当社の安定的な成長が始まったのです。
──ERP(Enterprise ResourcePlanning)とは何でしょうか。
野村 一言でいうと、企業の基幹システムのことです。たとえば経理や営業が異なるシステムを使うと数値上の差異が発生し、事業の効率化を阻むことになります。ERPを導入すると、販売管理や会計、流通や人事など、全ての業務を一つのパッケージでグローバルに統合管理することが可能になり、事業の効率化が実現するのです。とくにグローバル展開をはかる企業にとっては、必須のシステムと言えます。
SAPはERP分野においては世界一のシェアを持つ企業ですが、同社のソフトウェア製品は完全にブラックボックス化されており、プログラムの導入には専門のコンサルタントが必要になります。当社ではそのSAP社認定コンサルタントを多く擁しているのです。
独自のテンプレートで、高品質・短期間・低価格での導入を実現
──事業内容を教えてください。
野村 企業の課題を情報システム(主にSAP ERPソリューション)で解決することです。具体的には、SAP認定資格者による2つのサービス形態があり、一つは企業に対するSAP ERPの導入・保守・ライセンス販売を行う“プライム(直接取引)”。もう一つは、元請企業経由でコンサルタントによる支援を行う“FIS”(ファンクションインプリメントサービス)です。当社ではSAP ERP領域に特化することで、高収益のプライムに加えて、FISでも高付加価値サービスを提供しています。
──御社の強みとは何でしょうか?
野村 当社の強みは4つあります。1つは、SAPの日本法人であるSAPジャパンとの強いパートナーシップです。パートナー契約締結後、15年間に渡り信頼関係を構築しています。09年には、国内で約40社のみ認定資格を受けているライセンス販売のチャネル・パートナーとなり、一段と大きく飛躍するきっかけとなりました。11年には人事ソリューションプレート「Jet-one」の認定を取得、12年にはSAPソリューションの一次保守を請け負う認定資格「資格認定PCoE」を日本で初めて取得しています。
2つ目は、SAP ERPのプロフェッショナルであること。新卒採用の社員を中心にSAP認定コンサルタント資格を取得させ、現在120名(延べ人数)が在籍。その数は国内のSAPパートナー全125社中22位で、独立系企業ではトップクラスの存在です。
──御社は独自のテンプレートを活用したソリューションで知られています。
野村 それが第3の強みです。SAPのソフトウェアを日本企業に向けにカスタマイズした独自のソリューションテンプレートを開発し、高品質・短期間・低価格での導入を実現しているのです。当社はとくに人事ソリューションに強く、前述した人事ソリューション「Jet-one」は当社の主力商品。従業員情報の完全一元管理化のほか、勤務入力、給与計算、異動発令などあらゆる人事業務のシステムを一元化し、マイナンバーを含めた法要件への完全対応も実現しています。SAPジャパンの中でも第一選択の商品になっています。
4つめの強みは、「失敗しない」プロジェクト管理力を保有していること。SAP ERPに特化しているだけに、当社は豊富な経験や知見を蓄積しており、案件内容に応じた機動的なプロジェクトマネジメントが可能になっています。
──現在の業績はいかがですか?
野村 当社はコンサルティング力が評価され、人事・会計分野では3年間で11社の国内大手企業のプライム案件を受注しています。人事システムでは、化学メーカー、建設会社、システム会社、エネルギー会社、ゲーム会社、大規模私立大学など。会計システムではエネルギー会社、飲料メーカー関連会社など。このプライム案件が伸長しており、2期連続増収増益を実現しています。
国内ERP市場は安定的に拡大、プライム受注と顧客開拓を促進
──今回上場した狙いと、今後の成長戦略を聞かせてください。
野村 上場は資金調達もありますが、市場の信頼を得ることでプライム案件を増やし、優秀な社内人材の定着を図りたいという狙いがあります。
今後、国内ERP市場は安定的に拡大する見通しであり、まずは得意のERP人事・会計分野での案件数と受託規模の拡大をはかることを目指します。さらにビッグデータ需要の増加やクラウド市場の成長を踏まえ、後継製品へのリプレイス需要の取り込みを含めて、プライム受注の拡大と、顧客開拓を促進していきたいと考えています。また、SAPのサービスと連携した「SAP IoT」やAIについても取り組んでいきたいと思います。