全く新しいFC事業モデルにより、まねのできない速さで店舗展開──WASHハウス株式会社 代表取締役社長 児玉 康孝
WASHハウス株式会社
証券コード 6537/東証マザーズ
代表取締役社長
児玉 康孝 Yasutaka Kodama
九州を地盤とするコインランドリー業のWASHハウスが東京や大阪の大都市圏にも進出を始めた。生活環境の変化やアレルギー患者の増加等で時流に乗った商売だから繁盛しているように映るが、児玉康孝社長は「当社はコインランドリー業ではない」と説明し、投資家には「ビジネスモデルを見て欲しい」と言う。その真意は?
取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久
理想の事業モデルとしてコインランドリーを選択
――御社の創業はコインランドリー業が出発点ではないそうですね。
児玉 15年前、私の理想とする事業モデルがいくつかあり、その実現に最も合っていたのがコインランドリー業でした。その考え方はこうです。日本は少子高齢化により人口が減少する。住宅、小売り、飲食のような現在の利用率が高い商売ほど人口減少の影響を大きく受ける。ならば逆に、利用率が低い商売の利用率を向上させればいいのではないか。15年前のコインランドリーの利用率は、たった3%と言われていました。仮に日本の人口が半分になっても、利用率を6%に引き上げれば売上を維持できる。そういう発想です。
――競争相手はいなかったのですか。
児玉 コインランドリーの経営者は個人が多く、(企業の体をなしている)法人はほとんどいませんでした。これは業界構造に問題があるからです。
メーカーは洗濯機などの機械を作るだけ、機械を販売しているのは地域のボイラーや設備屋さん。機械を購入しているのは個人。結果的に強い競争相手はいませんでした。そこで本格的にフランチャイズ・チェーン(FC)を作れば面白いと思いました。
――店舗は創業地の宮崎県を中心に九州に広がり、2016年7月には東京にも進出しました。
児玉 現在は380店舗を超えています。17年12月期の新規出店は前期の約1.5倍増を見込んでいます。新規出店する際は必ずテレビCMを行って認知度を高める戦略をとっています。
――店舗数拡大の成功要因は?
児玉 店舗の遠隔操作システムが成功要因と思われていますが、もっと重要なポイントが二つあります。コインランドリー事業のFC展開と、従来のFCとは異なる全く新しいWASHハウスのFC事業モデルを構築したことです。遠隔操作システムの導入のようなことは他社でも真似ができますが、当社の仕組みは簡単にはつくれません。
――それはどういうことですか。
児玉 コインランドリー事業は装置産業であり、自社のみでの出店は償却負担が重いため、絶対に(貸借対照表に計上される)オンバランスで大量出店し続けることはできないのです。
つまり、洗濯機等の機械への設備投資負担が大きいためキャッシュフローが回っても、帳簿上は赤字となるのです。当社が100店舗単位で出店できるのは、このコインランドリー業界にFCという(貸借対照表に計上されない)オフバランスの仕組みを作ったからです。
全く新しいFCの仕組みで店舗を拡大
――つまりコンビニのようなFC展開をしている?
児玉 コンビニのような従来のFCは本部と加盟店が対立するという構造的な欠陥を持っていると考えています。消費期限切れのコンビニ弁当をめぐり、破棄を指示するFC本部と値引き販売で売り切りたい加盟店の利益相反などが、その事例として挙げられます。
そうした本部と加盟店が対立するのではなく、共存する全く新しいFC事業モデルを当社は構築してきました。その結果、当社のFC事業の加盟店から脱退した方はほとんどいません。
――一般的なFCとWASHハウスのFCはどこが違うのですか。
児玉 「事業」というよりは「投資」に近い仕組みになっている点です。
ビル経営を考えてください。入居者の募集、入居契約、家賃の集金、管理、退去手続き、リフォームまですべて不動産会社や管理会社が代行して行います。
当社のFC事業もそれに近い仕組みで、店舗運営や売上管理までを全店において代行しています。さらに、通常のFCでは、人やハード(店舗等)は加盟店側で用意するため地理的な制約が発生しますが、当社ではハードも人も本部で用意するので、オーナーとして地域に縛られることが無く、40店舗以上を経営されている方もいらっしゃいます。
つまり、加盟店オーナーの負担がほとんどないことが最大のポイントです。
認知度と価格競争力でライバルを圧倒
――そのFCの仕組みはコインランドリー業以外にも応用できますね。
児玉 そうです。ですから当社に「コインランドリー屋」という意識はありません。先ほどCMの話をしましたが、同業他社はTVCMを行っていません。それはなぜか。通常のFCには最初から広告費を予算として計上していないからです。一方、当社では、通常年商の3%以内と言われる広告費を最初から年商の10%程度使える予算組みをし、店舗運営支援をしています。
――なぜ広告予算を重視するのですか。
児玉 洗濯機や乾燥機という機械の性能(洗濯品質)は、極論を言えばどのメーカーでも変わりがない。最も重要な品質に差がないとすれば、次は認知度と価格の競争なので、広告予算が重要なのです。
――将来は何店舗まで増やすのですか。
児玉 目標ではなくて計算上の話ですが、15年前は2万から2万5,000店舗作れると思っていました。現在はもっと多いですね。15年前、宮崎県では月商100万円の商圏は半径2キロ、1万2,000世帯が必要でした。利用率が上がった今は8,600世帯でいい。つまり利用率を上げることができれば小さな商圏でも十二分に出店できるということです。
――最後に株主還元について教えてください。
児玉 先ずは、足元の業績拡大を当面の目標とし、将来の事業展開のための内部留保を確保しながら、配当性向20%以上を目標としています。