家賃保証のノウハウを医療費用や介護施設費用の保証に活かす──株式会社イントラスト 代表取締役社長 桑原 豊
株式会社イントラスト
証券コード 7191/東証マザーズ
代表取締役社長
桑原 豊 Yutaka Kuwabara
家賃保証サービスからスタートした総合保証サービス会社のイントラストは、保証のノウハウを生かして、医療費や介護施設費の保証サービスを提供。また審査や滞納管理といった専門性の高い役務を顧客企業向けにカスタマイズしたソリューションビジネスにも進出した。桑原豊社長に自社の強みや新事業の将来性を聞いた。
取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久
大手不動産管理会社へソリューションを提供
――御社の「保証サービス」と「ソリューションサービス」を教えてください。
桑原 当社は2006年3月、「賃貸不動産管理業界における連帯保証人の代替制度の構築」をめざしてスタートしました。お客さまのニーズを聞きながら日々の事案を処理していく中でノウハウが蓄積され、家賃保証と同じような立て付けのマーケットである介護と医療分野に着目し、14年8月に介護費用保証分野、15年5月に医療費用保証分野へ進出しました。これらは「保証の仕組み」を提供するもので、当社が顧客企業に代わり審査業務から契約管理、滞納管理業務といった専門業務(役務)を行い、滞納が発生した場合のリスクを保証します。
ソリューションサービスは「保証に関わる専門業務」を提供するもので、リスクの保証はせず、お客さまが必要とする役務の部分を提供することで課題を解決します。お客さまの業務フロー等に合わせてカスタマイズして提供することを前提としているため、必要とする役務だけを提供することができるのです。
―― 大和ハウスグループの大和リビングなど大手不動産管理会社が、主要顧客のようですね。
桑原 大手との取引により当社への信頼度をアップさせることができるほか、効率よく保証保有件数を拡大できること、組織的営業体制を活用でき拠点等のインフラを最小限に抑えることができるといった強みが挙げられます。
――大手企業は保証リスクを自社で取れるのではないでしょうか。
桑原 グループ内に保証会社を持つ大手のお客さまは保証リスクを取ることができますが、専門性の高い役務を内製化することはコスト面で考えると難しいのです。そこに「高品質かつ低コストの役務だけを提供して欲しい」というニーズがあります。
お客さまは課題を解決し、当社はさらにノウハウを蓄積することができます。それが継続的な取引や新たな取引に結びついています。
―― 医療・介護保証という先駆的な分野への進出も強みですね。
桑原 業務提携している医療機関は34医療機関7,406病床、介護施設は91介護事業となっています。医療保証を例に取ると、病院側のニーズは高いのですが、実際に契約し利用するのは入院患者さまです。そのため病院がまず患者さまに保証の内容を説明し、同意を得て契約し、費用負担をしてもらわなければなりません。このステップがあるため、大きなマーケットとして顕在化させるにはもう少し時間がかかりそうです。
――マーケットが顕在化した時には独占的なシェアが獲得できそうですね。
桑原 私はマーケットの独占は考えていません。健全な競争の中で獲得できるシェアは2割程度でしょう。医療・介護保証分野はまだマーケットが小さいため、試行錯誤しながら先頭を走っている状況ですが、マーケットが顕在化した時に一番の品質と内容の商品を提供できていれば、おのずとシェアも高まるはずです。
家賃保証のノウハウを医療や介護分野で活用
――なぜ他の分野へ進出したのですか。
桑原 総合保証サービス会社として、複数の商品を用意して会社の裾野を広げ、「山」を高くしたいという思いからです。
医療マーケットに関しては巨額な未収金(四病院団体協議会調査では10年の時点で推計総額284億円)が病院経営に悪影響を与えており、保証制度に対する注目度も高くなっています。インバウンドの増加で外国人の治療例も増えており、行政も未収金回収解決に向けた方策を検討しています。来年度からは外部監査が義務となる医療機関も増えて医療費保証の必要性が急速に高まるでしょう。当社としては、医療機関の方針や行政の方策にマッチした商品を出していきたいと考えています。
介護マーケットについても、国土交通省はサービス付き高齢者住宅(サ高住)を20年までに60万戸(17年1月末時点で21万戸、「サービス付き高齢者向け住宅」登録事務局調べ)に増やす目標を掲げています。賃貸住宅マーケットに比べれば小さいですが、マーケットが拡大していく事は確実と考えています。
保有件数の増加率と利益率の高さに注目
――売上高を見ると、15年3月期28億4,500万円、16年3月期26億5,000万円、17年3月期は27億1,400万円を予想しています。
桑原 大和リビングさまが連帯保証人不要制度を導入して保証サービスからソリューションサービスへシフトしたことで一時的に売上高が減少しました。しかし入居者全員がサービスを受けることになったため、60%だった当社の利用率が100%となり、利益率が向上しています。経常利益で見ると17年3月期の予想は5億9,200万円(15年3月期は1,300万円)、経常利益率は21.8%に達します。売上高が減少したため、「成長が鈍化しているのではないか」という指摘を受けることがありますが、保有契約数は年平均33%(07年3月~16年3月)という増え方をしています。この保有件数のストックの上に、新規売上が乗るという効率の良いビジネスモデルです。
――ソリューションサービスの他業種展開にも積極的です。
桑原 その一つに「Doc-on事業」があります。SMS(ショートメッセージサービス)の一括送信業務に、コールセンター機能、クレジットカード決済機能などの付加価値をパッケージにしたサービスです。銀行・住宅ローン会社、通信事業者など幅広い業種で使えます。「保険デスク」というソリューションは大手不動産管理会社の保険募集・付保(加入)管理も係る業務を一手に担います。