店内調理の「本当に美味しい料理」を供する外食店をドミナント出店──ユナイテッド&コレクティブ株式会社代表取締役社長 坂井 英也
ユナイテッド&コレクティブ株式会社
証券コード 3557/東証マザーズ
代表取締役社長
坂井 英也 Hideya Sakai
業界内で熾烈な競争が繰り広げられるばかりか、近年はコンビニチェーンにも市場を侵食され、厳しい環境下にある外食チェーン。だが、食材や製法にこだわりながらも客単価を抑えた3業態の店舗を特定地域に集中的に展開し、急成長を遂げてきたのがユナイテッド&コレクティブだ。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
鶏料理の「てけてけ」が主力、新業態の「the 3rd Burger」も
――首都圏で新進の外食チェーンを展開して急成長中とのことですが、全国の読者に向けて、御社が運営している店舗の概要などをご説明願います。
坂井 当社が掲げているのは、「本当に美味しい料理」を世界中の人々に届けて、世界を良くしていくというミッションです。2000年7月に創業し、同年9月に「魚・旬菜とお酒 心」1号店を東京の高田馬場にオープンしました。本物の食材を日本全国から仕入れ、海鮮料理を中心とした骨太な和食を提供するというのがコンセプトで、40〜50代サラリーマンをメインターゲットに、4,000円前後の客単価を想定して運営しています。
05年6月から新たに立ち上げたのが「鶏・旬菜・お酒 てけてけ」で、幅広い層のサラリーマンを対象に2,500円前後の客単価をイメージしてその1号店を東京の赤坂に開店しました。高度成長期をコンセプトにした店内で、産地直送の新鮮な鶏肉をこだわりの「にんにく醤油ダレ」で仕上げる焼き鶏で競合店との差別化を図っています。また、私の出身地の名物である濃厚コラーゲンスープの「博多水炊き」も看板メニューとするなど、鶏料理を中心とした居酒屋です。
さらに、アルコール以外のメニューを主体とする業態として、2012年12月に1号店(青山骨董通り店)を開業したのが「the 3rd Burger」で、これまでにない第3のハンバーガーカフェをめざしてそう名付けました。通常のハンバーガーチェーンでは、冷凍肉を工場で解凍してパティに加工し、再び冷凍して各店舗に供給しています。しかし、「the 3rdBurger」では一切冷凍していないブロック肉を各店舗で仕入れ、一つ一つパティを店内で作り上げています。バンズも毎日店内で発酵から焼き上げまで手掛け、ドリンクも野菜や果実をふんだんに使ったスムージーを用意しています。メインのターゲットは健康意識が高い20〜30代の女性で、800〜900円前後の客単価を想定しています。なお、2017年3月末時点で、「心」は2店舗、「てけてけ」は49店舗、「the 3rd Burger」は4店舗に達しています。
店舗内での調理にこだわるISP戦略で競合と差別化
――御社のビジネスモデルは同業他社とどのような点が大きく異なっているのでしょうか?
坂井 大手外食チェーンのビジネスモデルは、生産者から卸売を介して仕入れた食材を外部委託企業や自社のセントラルキッチンで一括加工を行い、店舗ではさほど手間のかからない最終調理のみを行うというものです。昨今のコンビニチェーンも似通ったルートで商品が供給され、各店舗は最終調理や完成品販売を担当しています。このようにバリューチェーン(価値連鎖)がほとんど同じなら、物量で勝り、小売販売するコンビニチェーンのほうがコストメリットの面で消費者から選択されがちで、外食チェーンの市場がどんどん侵食されていくのは無理もないことでしょう。
そこで、当社が打ち出しているのがISP(イン・ストア・プリペアレーション=店内調理)戦略です。これは、「5つの打ち手」によって各店舗における食材加工度を高い状態で維持しつつ、多店舗展開を推進していくというもの。そして「5つの打ち手」とは、①商品の絞り込み、②作業の機械化・自動化、③精緻な教育制度・免許制度、④直営店主義、⑤ドミナント出店です。
商品数を絞り込んで調理の合理化を図る一方、蒸したジャガイモから3つの異なるメニューを作り出すといった「プラットフォーム戦術」も展開しています。また、機械化・自動化で作業の生産性を高めて付加価値の向上に結びつけるとともに、品質の安定した商品の提供にも努めています。さらに、動画の調理・接客マニュアルや社内免許制度「焼き師」、「ビアマイスター」の導入で、正社員からアルバイトまで質の高いサービスを提供できる体制を整えています。
店舗展開に関しても、経営効率を高めるために、特定のエリア内に複数出店するドミナント戦略を貫いてきました。そうすることで、店舗マネジメントや店舗間における人材・食材の相互協力も容易になるからです。加えて、その地域における認知も高まり、シェア拡大にもつながります。直営による出店にこだわるのも、全店において質の高いサービスを提供するためです。
2020年中に200店舗の出店達成を当面の目標に
――さらなる成長に向けて、どのような戦略を掲げているのでしょうか。
坂井 まず、同業他社などが撤退した居抜き物件を活用した出店を推進していきます。そうすることで通常の3分の2程度にコストを抑えられ、短期間での黒字化を果たせる見込みです。併せて、ISP戦略による商品力の高さを通じて、着実に顧客を囲い込んでいきます。出店エリアは一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)の国道16号線内側が目安で、乗降客数が3万人以上の駅周辺に照準を定めています。同エリアにおいて、「てけてけ」で200店舗以上、「the 3rd Burger」で100店舗以上の出店余地があると見込んでいます。
当社の中期ビジョンで掲げているのは、2020年中に200店舗出店を達成するとの目標です。利益貢献度の高い「てけてけ」の店舗数拡大で着実に売上高を積み上げつつ、「the 3rd Burger」の出店攻勢で成長にドライブをかけて、2021年2月期には売上高200億円の達成をめざします。そして、それらを果たしたうえで配当や株主優待といった還元策にも積極的に取り組んでまいります。さらにその先では米国への進出も検討しており、株式の新規公開で調達した資金はこうした成長加速のために充てたいと考えています。