サブスクリプション一元管理というオンリーワン事業でIoT社会に貢献――ビープラッツ株式会社 代表取締役社長 藤田 健治
ビープラッツ株式会社
証券コード 4381/東証マザーズ
代表取締役社長 藤田 健治
Kenji Fujita
様々なものがネットワークに接続されている現在。あちこちで「課金」が発生し、その請求や管理は複雑化の一途を辿っている。このお金のやり取りを一元管理可能なプラットフォームを事業会社に提供して急成長しているビープラッツの藤田健治社長に事業の内容や強みについて聞いた。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
生活のあちこちで発生する「従量課金」を一元管理
―― 御社設立の経緯とビジネスの概要についてご説明願います。
藤田 私は三井物産在籍中にIT分野を担当し、2002年からは同社が設立した子会社ライセンスオンラインの代表取締役を務めました。ここで3,000社余りのeコマースサイトの販売網構築に携わり、まだクラウドという言葉さえ生まれていなかった時代からITの分野に深く関わってきました。そして、現在の事業領域としている「サブスクリプション」の将来性を予見し、2006年に当社を創業しました。
サブスクリプションはあまり一般的には認識されていないかもしれません。しかし、実はすでに多くの人が広く関わっていることでもあります。従来の商取引は「ワンタイムトランザクション」と呼ばれる、販売主と購入者との間のお金のやり取りが基本的に1回で完結するものでした。ところが、情報端末だけにとどまらず家電など様々なものがネットと接続するIoTやクラウド化が進む現在、そのように単純なやり取りでは済まなくなってきています。
通信料や電気・ガスなどの公共料金に加えて、クラウドやIoTのサービス利用料、音楽・映像配信、さらにシェアリングビジネスといったように、継続的に使った分だけを徴収する従量課金が急速に拡大しています。こうしたお金のやり取りがサブスクリプションであり、当社では、その煩雑な業務・管理におけるあらゆる課題を解決するプラットフォーム「Bplats」をIoTや通信、クラウドといった分野の事業者向けに提供しています。BtoBのサブスクリプションの業務や管理に係る機能をワンストップで提供し、契約内容に沿った料金請求を行えるだけでなく、取引先の事業者も「Bplats」を利用していれば、複雑な売買モデルであっても一気通貫で構築・管理できる点が他にはない大きな特長です。
周知の通り、クラウドやIoTにおいては技術革新が進んでおり、通信では規制緩和によるMVNO(格安スマホ)事業者の参入などで競争が活発化しています。こうした環境の下で、導入が容易で他の取引先と従量取引を「共創」できるプラットフォームを提供し、ストック型収益を積み上げていくビジネスモデルが当社の特長であり強みです。
今期大幅なピッチで増収増益の見通し
―― 足元の業績の状況と、今後の展望についてお聞かせください。
藤田 2018年3月期はサブスクリプション事業の拡大に伴って、過去最高の利益を達成しています。新製品「Bplats Platform Edition」の立ち上がりが好調で、さっそく業績に貢献しました。販管費は増加したものの、売上高の増加と開発原価の抑制により、今期は増収増益となり、3,000万円の当期純損失だった前年同期から一転し、4,000万円の黒字となりました。
もっとも、前期に経常赤字を計上したのは、拠点拡大や人員強化のための採用費など、一過性のコストの増加によるものであったと言えます。ここ数年、当社の売上高は着実に拡大傾向を示しており、年平均の成長率は25.6%となっています。今期は特にIoT向けが順調で、その売上高は前年比で140.3%という高い伸びを示しました。
2019年3月期につきましては、引き続きIoT分野向けを中心に顧客基盤の拡大を図っていきます。その一方で、販売パートナー企業との連携も強化していきます。そして、「Bplats Platform Edition」を軸としたプラットフォームの機能強化によって、さらなる増収増益を達成できるよう努めてまいります。
IoT市場の拡大を背に3次元的な成長をめざす
―― 中長期的な観点からは、どのような成長戦略を掲げていますか?
藤田 IoTの分野は2021年まで年間平均17%のペースで成長を続け、その市場規模は11兆円にまで拡大すると言われています。こうした追い風を受けながら、IoTによる効率化とマネタイズ(収益化)を同時に実現するという点で、当社は非常にユニークでオンリーワンの存在だと自負しております。
当社のプラットフォームは各事業者が個別にメンテナンスなどを行う必要がなく、API(相互利用の仕組み)によって自社サービスとも自由に連携できます。クラウドや通信といった事業基盤サービスはすでにAPIでつながっているため初期投資を抑えたスムーズな導入が可能です。導入企業同士であれば商流の構築が一気通貫でできるため、今後は顧客企業を基点としたグループ会社や取引先への導入の拡大が期待できます。
IoT市場の拡大でサブスクリプションのニーズがいっそう拡大していく中で、当社はオンリーワンのビジネスで先行者利益を拡大させ、積み上げ型の収益をさらに拡大させながら、取引先企業をパートナーとする共創モデルを追求していきたいと考えております。
こうした成長戦略を推進していくうえでは一層の人材強化が不可欠で、会社としての社会的信用を高めるためにも必要であると考え、株式の新規公開を決断しました。
―― 株主還元にはどのような姿勢で取り組んでいきますか?
藤田 非常に重要な施策であると認識しておりますが、今は事業の拡大のために経営資源を集中させている最中で、残念ながら無配となっています。当面は企業価値の最大化を追求することに専念し、利益成長を反映した株価の上昇によって株主の皆様の期待にお応えしたいと思います。当社はまだまだ成長途上であり、中長期的な観点からその活動を見守っていただけますと幸いです。