伊藤忠グループと協働し物流業界の発展に貢献──伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人 執行役員 東海林 淳一
伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人
証券コード 3493/東証REIT
執行役員 東海林 淳一
Junichi Shoji
伊藤忠商事と伊藤忠都市開発をスポンサーとする物流不動産特化型Jリート、伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人。スポンサーとの協働関係や物件の取得方針について上場を果たした執行役員の東海林淳一氏に聞いた。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
伊藤忠グループが開発した物流不動産を保有・運用
―― 法人の概要についてご説明をお願いします。
東海林 当投資法人は、伊藤忠商事と主にマンション開発を手掛けているグループ会社の伊藤忠都市開発がスポンサーとなっているJリートで、物流施設を主要な投資対象としております。ご存知の通り、伊藤忠商事は非資源、特に生活関連分野に強みを有している総合商社です。当投資法人が所有する物流不動産のテナント様には食品やアパレルなどといった生活関連分野の流通に携わっているところが多く、その点でも伊藤忠商事と私たちのビジネスとは非常に親和性が高いと言えるでしょう。
また、商社のイメージと不動産開発は結びつきにくいかと思いますが、伊藤忠商事は不動産開発を非常に得意としているのが特徴です。古くから住宅やオフィス、商業施設などにおいて実績を残してきましたし、他に先駆けて2004年から物流施設の開発にも取り組んできました。グループ会社を通じて自前で物流のオペレーションを手掛け、施設開発やリーシングにも力を入れてきました。
こうして伊藤忠グループは、建設・物流部門において「不動産・物流プラットフォーム」を構築してきたわけです。加えて、伊藤忠商事は約10万社に及ぶ豊富な取引顧客網から成る「商社・商流プラットフォーム」も有しております。当投資法人はグループの「不動産・物流プラットフォーム」をベースに、「商社・商流プラットフォーム」を活用した物件供給やリーシングを展開していくことで、持続的な成長を図ってまいります。
伊藤忠グループとの間で「拡張的協働関係」を築く
―― 伊藤忠商事にとって、このJリートはどのような役割を果たすのですか?
東海林 当投資法人が物流不動産の保有・運用を担うことによって、伊藤忠グループもテナント企業様との接点が増え、ビジネス上のニーズを察知する機会が拡大します。そして、それらのご要望に応えて速やかにソリューションを提供することで、お互いの関係強化を図っていきます。こうした取り組みが伊藤忠グループのプラットフォームをいっそう強化するとともに、当投資法人の成長にも結びつくという「拡張的協働関係」を築いていくことをめざしております。
これまで伊藤忠グループの建設・物流部門における物流不動産開発の事業展開は、不動産の素地の発掘から開発、リーシング、そして外部売却までで止まっていました。しかし、当投資法人が誕生したことで、保有、運用、管理に至るまでのバリューチェーンが完成しました。同じく伊藤忠グループで、住宅特化型Jリートにおいて最大規模のアドバンス・レジデンス投資法人でも、同様のアプローチが行われています。こうしたバリューチェーンが円滑に回っていくことで、伊藤忠グループは開発した不動産の滞留リスクを一定程度軽減できます。
―― オリンピック後に不動産市況が悪化するとの懸念も出ていますが。
東海林 目先では供給の過剰感もうかがえ、確かに空室率が少し高まっているエリアも出てきているようです。しかしながら、今後もeコマースが堅調に推移していくと思われることから、目先の陰りは一過性のものにとどまるのではないかと考えています。
そもそも当投資法人では、伊藤忠グループの不動産開発・ものづくりの姿勢と同じく、無理な物件取得は行いません。伊藤忠グループでは先にも触れた「商社・商流プラットフォーム」を通じ、テナント候補の企業様とのコミュニケーションを密にして、リーシングの蓋然性を高めたうえで開発を進めています。eコマースを中心とした底堅いニーズの中で、当投資法人はこのような経緯で供給された物件の保有、運用、管理を担っていくことになります。
eコマースの堅調なニーズで物流不動産の重要性が高まる
―― 物流に特化しているのは、どういった理由からなのでしょうか?
東海林 私事の事例で恐縮ですが、私の母がいわゆる〝買い物難民〟になっているのを目の当たりにしました。高齢で自動車を利用しないと買い物が難しいものの、自分では運転できません。必要に迫られたことで、eコマースによって生活必需品などを購入しているのです。更に高齢化社会が進めば、このような話は私の母だけに限ったものではなくなってくるでしょうし、そう考えるとeコマースの需要は非常に底堅いものであると言えそうです。こうした環境下で、物流不動産は重要な社会インフラとしての役割を担っていくことでしょう。経営理念にも掲げているように、投資主価値の最大化こそ当投資法人の最終的な目標ではありますが、Jリート市場に上場した以上、物流業界全体に何らかの形で貢献していきたいと考えております。それを名実ともに果たし、着実に運用を進めていくことによって、投資家の皆様にご評価いただければ幸いです。
── 今後の成長戦略を教えてください。
東海林 伊藤忠商事および伊藤忠都市開発からパイプラインサポート(優先交渉権の付与)を受けながら、今後5年間を目途に2000億円を目標として資産規模の拡大をめざしてまいります。現状、当投資法人が保有する物件エリアは着実に需要が見込める首都圏の国道16号線周辺が中心ですが、今後も首都圏を中心に、他のエリアにも対象を拡大していきたいと考えています。
さらにその先を展望すれば、商社グループとしての強みを生かし、アジアをはじめとする海外物件も視野に入ってくるかもしれません。また、ポートフォリオの2割以下の範囲内で物流以外の不動産も組み入れ可能です。いずれにしても、様々な可能性に目を向けて成長を図ってまいります。