企業とフリーランスをマッチングし日本のIT市場を活性化させる――ギークス株式会社 代表取締役社長 曽根原 稔人
ギークス株式会社
証券コード 7060/東証マザーズ
代表取締役社長 曽根原 稔人
Naruhito Sonehara
「21世紀で最も感動を与えた会社になる」というビジョンを掲げ深刻なIT人材不足を解消する事業を展開しているギークス。ITフリーランスの働き方支援を推し進める曽根原社長に事業内容や今後の成長戦略について聞いた。
取材・文/おおはし みほ、小椋 康志 写真撮影/和田 佳久
IT人材事業を主軸に5つの事業を展開
―― 御社の事業内容を教えてください。
曽根原 当社グループは子会社2社とともに現在5つの事業を展開しており、メインはIT人材事業です。フリーランスとして独立し、ITエンジニアとして活躍されている方々を支援しようというコンセプトで立ち上げました。2030年には最大で約80 万人ものIT人材が不足すると推計されていますので、これからは優れたIT人材を企業間でシェアリングする必要があります。IT人材不足で悩んでいる企業とITフリーランスを最適な形でマッチングするのが当事業の目的です。
次の柱として展開しているのがゲーム事業です。リーマンショックを経験し、もう1つの柱が重要であると痛感しました。そこで、私たちの強みであるITフリーランスのデータベースを活かして「BtoC事業を自ら持ちたい」と、ゲーム事業を立ち上げました。現在は、大手メーカーと協業するパートナー戦略をとっています。
3つ目がIT人材育成事業です。IT人材を育成するためのエンジニア留学を提供するテックスクールをフィリピンのセブ島で運営しています。卒業生がITフリーランスになることもあり、本体事業とのシナジー効果が高い事業です。
このほかに、最新技術を駆使した映像や、遊技機のプロモーション動画を受託制作する動画事業、若手及び女性ゴルファーを中心に月間40〜50万ユーザーが閲覧するゴルフ業界に特化したメディアを運営するインターネット事業を展開しています。
精度の高いマッチングと福利厚生プログラムで差別化
―― ITフリーランスの登録状況はいかがでしょうか。
曽根原 2019年3月末現在で累計約1万6千人の方が登録しています。入口は登録している方からの紹介が多いのが特徴です。1人につき2時間ほど打合せをし、経歴やスキル、過去に参加したプロジェクト、フリーランスとしての働き方や考え方などをヒアリングし、その情報をデータベース化しています。
実はIT人材の不足というのは、単に人がいないということではなく、より旬なスキルを持った人材が足りていないということなのです。当社はプロジェクトで最も必要とされる「設計・プログラミング実装」工程にポジションを置き、技術面においてはミドルからハイスペックに位置する開発系のエンジニアを揃えています。技術属性は、WEB系とスマホ系で60%を占め、人材の質には徹底的にこだわっています。
―― 取引先はどんな企業でしょうか。
曽根原 顧客企業は累計で3千社以上、年間契約企業数は500〜550社ほどで、国内最大級のフリーランスエージェントです。業種はBtoC系のサービス企業からフィンテック、ゲームなど幅広い領域にわたっています。15年にわたる事業実績から各企業と密な関係性があり、独占案件や高額案件などを用意できるのが強みです。サービスのスピード、オペレーションの速さ、マッチング精度の高さ、サポートの手厚さなどでは他社を圧倒していると自負しています。
フリーランスの方はさまざまな不安を抱えています。需要の方が圧倒的に多いのに、自分をアピールすることが苦手な方がたくさんいますので、当社としてはセールス機能とバックオフィス機能を整備して提供しています。営業や契約書の作成にとどまらず、確定申告の無料相談、会計ソフトや人間ドックの割引利用など、フリーランスとして働くための環境づくりを総合的に支援しています。
信用力とブランド力を高めマーケットを作り上げていく
―― 業績と成長戦略についてお聞かせください。
曽根原 IT人材事業は約20%の成長率で順調に拡大しています。ゲーム事業はゲーム運営収入とレヴェニューシェア収入というストック型の売上に、新規開発収入であるフロー型の売上が加算され、営業利益が大幅に伸びています。IT人材育成事業と動画事業でも、売上高・営業利益ともに過去最高を更新しています。2020年3月期も増収増益を計画し、営業利益は6億5,000万円を想定しています。
今後はIT・インターネット分野を軸としたポートフォリオ経営を展開し、どこかが厳しくても他で補えるようなグループを築き上げていきます。一社一業にこだわらず、ある程度の成長が見込めたら分社化をしながら当社グループの中で育て上げ、ブランド化していく方針です。
―― 上場した理由は何でしょう。
曽根原 一番の理由は、IT人材事業にあります。当社はフリーランスという市場を作っていく側になりたいと考えています。フリーランスエージェントはこれから拡大するマーケットですので、当社はここに貢献していきたいと思います。そのために必要となる信用力やブランド力を築くため、今回上場という選択をしました。
1986年に労働者派遣法が施行された当時は珍しかった派遣社員も、90年代後半には当たり前になりました。それと同じように、今後はフリーランスが当たり前になる時代がくると予想しています。しかし、いまだにフリーランスを活用しきれない企業が多いのも事実です。当社としては、フリーランス人材を増やしていくと同時に、企業側の意識を変えていくための啓蒙活動にも力を注いでいきたいと考えています。
―― 株主還元についてお聞かせください。
曽根原 事業への投資や財務状況を鑑みながら資金の用途を考えていきます。ゆくゆくは株主の方々へ還元できる体制を整えていきたいと思います。