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2016-02-17

胡蝶蘭の卸売業で独自のビジネスモデルを構築──アートグリーン株式会社 代表取締役社長 田中 豊

アートグリーン株式会社
証券コード 3419/名証セントレックス

代表取締役社長
田中 豊  Yutaka Tanaka

法人の贈答用・慶弔関連の生花の主役である胡蝶蘭。アートグリーンはその胡蝶蘭の販売に注力して、川上から川下に至る独自のビジネスモデルを構築、流通量では日本一を誇る規模に成長した。生花流通に革命を起こす、同社の成長の秘訣を田中豊社長に聞いた。

(取材・文/上條 昌史 写真撮影/キミヒロ)

「役員四季報」からビジネスチャンスを見出す

――創業は1991年。社長の前職は別業種だそうですね?

田中 前職はゴルフ場の開発会社です。小学生のときから社長になると決めていたので、起業資金を貯めるために就職。時はバブル期で、会員権を売ると報奨金がたくさん貰えました。その蓄えた資金で25歳のときに起業したのです。当初、業種は未定でした。

 参考にしたのは役員四季報。当時の冊子には上場企業の役員の趣味の欄があり、全員の趣味を「正」の字で数えたところ、1位が読書、2位がゴルフ、3位と4位が旅行と園芸で同じくらいでした。読書は出版社が多数、ゴルフ場開発は資金が必要、旅行も大手旅行会社が何社もある。調べると、園芸は1兆2,000億円くらいの市場規模があるが、上場しているのは当時サカタのタネ1社だけ。ニッチトップになれる可能性が大と見たのです。

――胡蝶蘭を主力にしたのは?

田中 洋蘭の市場は年間500億円あり、その半分250億円が胡蝶蘭。単価が高いので利益率も高い。市場の10%を取れば25億円の売上になる。ならば胡蝶蘭で日本一になろうと考えました。ただブランド力も資金もなかったので、小売りは無理でした。ならば全国の花屋さんが、こぞって当社から胡蝶蘭を買ってくれる卸売業になろうと考えました。

大企業の関連会社に受注体制を整えてもらう

――現在、卸売業では非常にユニークなビジネスモデルを構築していますね。

田中 主力事業には、まずフラワービジネス支援事業があります。その事業のなかで、当社の一番の特徴は、大手企業の関連会社に企業グループ内の慶弔関連の生花発注を取り扱う部署を設けてもらい、当社がその受注品の仕入れから配送までのすべての業務を代行するという事業モデルを構築している点です。

 大手企業は、取引先企業への贈答などの慶弔関連で生花の使用頻度が非常に多く、年間1億円〜1億5,000万円を使う企業もあります。通常であれば総務部や秘書課の担当者が一般生花店に発注しますが、当事業モデルでは、グループ内の関連会社に生花注文を取りまとめる受注体制を整えてもらうのです。

 企業側は、知識や経験がなくても、胡蝶蘭をはじめとする生花全般をグループ企業へ販売するフラワービジネスに、リスクなく参入することができます。また社外に流出していた需要をグループ内に取り込むことで関連会社の売上を計上できます。グループ全体から見れば、当社は一般よりも価格が安いため、経費節減のメリットを享受することができます。贈答件数が月平均120件ある大手金融会社の事例では、子会社で取り扱いを始めたところ、約28%のコスト削減に成功、年間1,000万円以上のコスト削減を実現しました。

初期投資をせずに自社生産する仕組みを構築

――種苗の販売も行っていますね?

田中 もう一つは、ナーセリー支援事業。台湾農場から輸入した胡蝶蘭の種苗を、国内の胡蝶蘭の生産農家に販売する事業です。ここでは、販売するだけでなく、生産農家と提携して、胡蝶蘭の自社生産を行う農園事業も行っています。

 そのなかで、いま新しい試みが始まっています。いま全国には約300の胡蝶蘭の生産農家があるのですが、ある生産農家の経営が苦しくなり種苗代を払えなくなったことがありました。そこで当社が種苗の購入費用や栽培にかかる費用を負担する代わりに、売上を生産農家と折半する事業を始めたのです。高品質の花を出荷し、売上が拡大すればボーナスも支給します。当社にしてみれば、初期投資をせずに自社生産ができ、生産農家は生産に専念して事業を立て直すことができるのです。

 最初の試みが成功したため、現在は第二、第三の大規模な生産農家がこの方式に挑戦しています。今後も生産農家との連携を深め、この展開を広げていきたいと考えています。

――自社生産ができることの強みとは?

田中 自社生産ができるということは、市場を通さずに販売流通ができるということ。自ら価格決定ができるので、市場の価格の乱高下に関わりなく、安定した収益を得ることができるメリットがあります。現在、種苗の仕入れから流通の出口まで持っているのは、当社しかありません。この仕組みを支えているのは、台湾の種苗業者との信頼関係です。

 種苗業者にもいろいろあり、約束どおり納品してくれる業者を開拓するのに、長い年月がかかりました。約270社と取引をし、現在ようやく11農場に集約し、安定した供給体制を築いたのです。品質のよい種苗の供給は、この地道な努力の上に成り立っているので、他社がなかなか真似のできない部分なのです。

洋蘭のファンの方々に株主になってもらいたい

――今後の成長戦略は?

田中 胡蝶蘭の販売で世界一になること。最終的にめざしているのは、総合園芸商社です。いうなれば、園芸のシンクタンクになっていきたいと考えています。たとえば胡蝶蘭を育てる情報提供や技術指導、ビジネス構築のコンサルで収入を得るビジネスの展開です。

 たとえば胡蝶蘭の栽培は本来難しいのですが、現在はクローン栽培の技術があるので、温室環境のクオリティを整えれば、高い品質の生花を安定的に育てることができます。

 実際に当社では、ある大手企業と提携して障がい者の自立支援のために胡蝶蘭事業を行い、育てた胡蝶蘭が全国洋らん品評会で金賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

 当社は売上が倍々で伸びるような、急成長する企業ではありません。そのかわり独自のビジネスモデルで着実な成長を続けていきたいと考えています。2015年10月期の売上高は1,686百万円、経常利益は57百万円、当期純利益は45百万円。安定した実績を積み重ねています。

 洋蘭はファンが多く、そのファンの方々に株主になっていただき、日本の洋蘭文化を共に世界に発信していけたら嬉しいですね。経営の根底にあるのは、「至誠通天」。誠を尽くせば、願いは天に通じるという吉田松陰の言葉ですが、その通りだと考えています。

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