あらゆる外部委託ニーズに応えるトータル・アウトソーシング・サービス──富士ソフトサービスビューロ株式会社 代表取締役社長 貝塚 隆
富士ソフトサービスビューロ株式会社
証券コード 6188/JASDAQスタンダード
代表取締役社長
貝塚 隆 Takashi Kaizuka
※2016年6月22日付で代表取締役社長から取締役会長になることが内定しております。
経営の効率化は企業の大命題で、業務の外部委託を極力図ることが時代のすう勢。しかしながら、データ漏洩のリスクも伴うだけに、企業としては全幅の信頼を寄せられる委託先を選びたい。こうした中、幅広いニーズに1社ですべて応えるサービスを展開し、着実に顧客基盤を拡大させてきたのが富士ソフトサービスビューロだ。
(取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久)
データ入力から人材派遣、ウェブ制作までトータルで受託
――改めて御社のビジネスの概要についてご説明願います。
貝塚 当社は1984年の創業以来、データエントリー(電算入力)事業を中心にお客さまのビジネスをサポートし、入力から仕分け、チェックまで包括的に手掛けてまいりました。そして、ここ10数年来におけるICT技術の進歩を踏まえて、お客さまのより高度なニーズにすべてお応えすべく、トータル・アウトソーシング・サービスを展開しています。5つのサービス・パッケージを互いに連携させつつ、より専門的、より幅広いサービスを提供しているのです。
オフィス・サポートサービスではクライアントの要望に応じて様々な分野のスペシャリストを派遣。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスでは、データエントリーから業務全般の代行、最適なソリューションを提案するコンサルティングを行っています。そして、ソリューションの構築後もシステム・サポートサービスによって万全のサポート。コンタクトセンターサービスでは、電話やFAX、Eメール、チャットなどを通じてクライアントの顧客とのコミュニケーション業務を代行。ウェブコンテンツサービスではサイトの構築・運営はもとより、技術者の派遣まで展開しています。
中央省庁とのパイプが太く、ストック型の収益モデルも強み
――御社の強みはどこですか?
貝塚 アウトソーシング・サービス自体は他の多くの企業が提供していますが、当社のようにトータルでカバーしているところは他にあまり例を見ません。当社なら、クライアントの求めている作業をまるごと受託できるのです。また、年金関連のように専門性の高い分野に関する事務代行や電話応対などに対応できる人材がそろっていることも当社の財産だと言えるでしょう。
別の角度から言えば、①顧客基盤と運用ノウハウ、②ストック型の収益モデル、③顧客開拓力が当社の強みであるとも捉えられます。総合提案による受注獲得で、中央省庁に強いのが特徴です。具体的には、官公庁が約40%、民間企業が約60%という売上構成比となっています。継続的に当社のサービスを利用していただいているお客さまに加え、新規開拓による積み上げで安定成長を遂げていることも強みの1つです。たとえば、2012年3月期における継続顧客数は166社でしたが、2015年3月期には242社に拡大しています。
さらに、顧客開拓に関しましても当社は長年にわたる業務で高いノウハウを培っております。人材派遣サービスを通じて、お客さまの業務プロセスを直接的に習得。こうして習得した業務プロセスを解析したうえで次のBPOサービスに反映させることにより、競合他社との差別化や顧客満足度の向上を図っています。加えて、災害・事故やリコール、制度変更などといった緊急対応に対処できることも顧客の開拓へと結びついています。
――創業32年目というタイミングで株式の新規公開に踏み切ったことに、どのような狙いがあったのでしょうか?
貝塚 お陰様で、当社は過去5年間の年平均成長率5.9%と、地道ながらも着実に売上を伸ばしてきました。こうして顧客基盤を拡大させていけば、おのずと大手と競合することになります。しかも、あらゆるアウトソーシングのニーズに応え、膨大な顧客データを扱うというビジネスの性格上からも、お客さまから高い信頼を獲得することが重要となってくるわけです。競合他社には上場企業も多いことから、当社もさらなる顧客獲得をめざして株式の新規公開を行うタイミングが訪れていると判断しました。
人口減少とネット社会進展で外部委託の需要は拡大の一途
――今後の利益成長については、どのようなビジョンを描いていますか?
貝塚 人口減少に伴う慢性的な人手不足とネット社会のさらなる進展でアウトソーシングに対するニーズはいっそう高まり、その範囲も拡大していくものと思われます。コールセンター市場、BPO市場とも、中長期的な成長が見込まれるとの調査結果も出ています。こうした世の中の流れを踏まえて、当社はトータル・アウトソーシング方式の提案をさらに強化していく方針です。中長期的には、2015年3月期に約24%だった構成比を倍増させることを成長戦略として掲げております。一方、特化型コールセンターによるBPOサービスの拡大にも努めます。経営資源を官公庁、ITヘルプデスク、金融系に集中投下し、専門性と品質に重点を置いたBPOサービスを推進する所存です。併せて設備やシステムの増強を図り、需要の拡大にも対処していきたいと考えています。
――株主還元についてはどのように考えているのでしょうか?
貝塚 大きく分けて2つのことから、株主のみなさまの期待に応えていきたいと思っています。その1つは、売上と利益を着実に伸ばしていき、EPS(1株当たり利益)の向上を図っていくことです。もう1つは、利益の一部を配当として株主のみなさまにしっかりとお支払いすることで、配当性向30%を具体的な数値目標として掲げています。
先でも述べたように、「委託できる業務は極力外へ」という世の中の声に幅広く応えるという意味で、当社の果たすべき社会的責任は重いと言えます。また、事務作業の代行やコールセンターでの対応などといった職種上、当社内では約75%を女性が占めています。全国各地に展開している拠点を通じ、広く女性が活躍できる会社であり続けたいとも考えております。こうして社会的使命を果たすことも、広義では株主還元の一環だと言えるのではないでしょうか。