精肉を核とする業容拡大により、総合フードビジネスとして飛躍──株式会社ジャパンミート 代表取締役社長 境 正博
株式会社ジャパンミート
証券コード 3539/東証2部
代表取締役社長
境 正博 Masahiro Sakai
熾烈な価格競争、商品原価の上下動など、世界規模で食を取り巻く環境が大きく変遷するなか、独自のビジネスモデルにより、安定的な成長を遂げているのがスーパーマーケット事業、外食事業を手掛けるジャパンミートグループだ。精肉卸からスタートした同グループならではの強み、特徴について迫った。
(取材・文/大沢 玲子 写真撮影/中村 公洋)
関東一円に広く店舗展開する
食の総合グループ企業
――まずは、御社のビジネス概要について教えていただけますか。
境 1978年、精肉卸売りとしてスタートした当社グループは、現在、ジャパンミートおよび連結子会社4社の計5社を擁し、首都圏を中心にスーパーマーケット事業と外食事業を手掛けています。
スーパーマーケットは「ジョイフル本田」などの大型商業施設内に出店する食品スーパー「生鮮館」、埼玉、千葉を中心に展開する単独店舗の「卸売市場」、北関東を中心に連結子会社のパワーマートが運営する地域密着型スーパー「パワーマート」の3業態に加え、2013年には都市型ホールセールストア「肉のハナマサ」を運営する花正を子会社化し、課題であった東京23区内への進出を果たしました。現在では、関東一円に計77店舗を営業しています。
外食事業については、連結子会社のジャパンデリカの運営による「焼肉や漫遊亭」「漫遊カルビ」「とんかつや漫遊亭」の計14店舗を展開しています。
生鮮に強い店づくりで商圏拡大、
安定した集客力を誇る
――貴グループならではの強み、特徴はどこにあるのでしょうか?
境 ポイントは大きく2つあります。第一に、創業時から蓄積してきた卸売りのノウハウを活かし、仕入れ、生産から販売まで一貫して手掛けるビジネスモデルを構築している点です。
商品開発、生産については長年の運営ノウハウを持つ加工物流センターで主に実施し、原料受け入れから、加工、出荷に至るまでの品質管理体制や衛生状況などを徹底管理。さらに“売れ筋売価発想”を基本に、購買ニーズの高い商品に対して、こだわりの質・量・価格を実現させた商品を店舗に配送しています。
店舗では、“単品で日本一の売上を作る”ことを目標に、特定の商品を大量に陳列し、購買意欲を高める“異常値販売”を定期的に実施。販売力、収益力、成長力を仕組み化した事業展開を推進しています。
二点目は、部門制による専門性を強調した売り場展開が挙げられます。精肉卸売りから、青果、鮮魚、惣菜に特化した専門会社のグループ化により、生鮮に強い店づくりを追求。生鮮三部門の売上構成比は全店で50%超を占めており、料理の素材を安く売る店として商圏の拡大、客数の安定につながっています。
外食部門についても、「2,200円の客単価で5,000円分の価値提供」を目標に掲げているように、得意とする精肉の調達力、ノウハウを活かし、新鮮で高品質な料理を安価で提供できるのが強みです。
高い営業利益率を背景に
長期的かつ安定的な成長を実現
――業績について教えてください。
境 小売・外食業界で、客単価引き上げ戦略にシフトする傾向も強まるなか、当グループでは“異常値販売”に代表される売上点数を伸ばす戦略が成功し、消費税増税の年度以外については、既存店売上の昨年対比100%超を継続しています。2016年7月期の売上高予想958億円に向けての進捗率も良好で、営業利益率も前期3.8%、今期予想4.5%と、同業他社と比較しても高い水準を実現しています。
――今年4月に実施した上場の狙いと今後の成長プランを教えてください。
境 上場については、10年以上前から準備、組織作りを進めてまいりましたが、花正とのM&A効果もあり、売上1,000億円が視野に入るなか、次の成長ステージを目指すべく決意しました。
新たな進化と飛躍への序章としては、2016年6月に東京・芝浦に東京本部ビルが誕生。茨城県茨城町では新加工物流センターの稼働もスタートします。
加工物流センターは、中核事業である精肉小売りを全面的に支えるまさに“要”です。新センターはこれまでのノウハウを活かした高い生産効率を誇るとともに、常磐自動車道岩間IC、北関東自動車道茨城町西ICの至近距離に位置しており、関東一円に広く店舗展開する当グループとしては、さらなる高い機能性が期待できるものと考えています。
今後の新規出店計画としては、小売・外食併せ、これまでの年間2~4店舗という出店ペースをキープしていく予定です。既存店においては、新規出店が加速化している「肉のハナマサ」や「卸売市場」を中心に出店を進めるとともに、生鮮に強く、集客力が強いテナントとして大型商業施設への展開も推進してまいります。また、都心に向けては、「肉のハナマサ」以外の新規店舗業態への開発も積極的にチャレンジしていく予定です。
ただし、新規出店に当たっては、現在の営業利益率を維持することが前提となります。為替変動や異常気象などを要因に、商品原価の変動幅が増大傾向にあるなか、外部環境の変化による影響を最小限にするためにも、高い営業利益率をキープすることで、安定的な価格帯を維持する“耐性”を高めてまいります。
加えて、シナジー効果が期待できそうな企業があれば、M&Aも視野に入れ、さらなる成長を目指してまいります。
――株主還元についてのお考えと、投資家へのメッセージをお聞かせください。
境 株主還元については、当社の強みを活かしたビジネスモデル、収益基盤のブラッシュアップにより、売上と利益を着実に伸ばし、長期的かつ安定的な配当性向を維持してまいります。
また、人的依存度が高い小売、外食を手掛ける企業として、社員のコンプライアンス意識の向上、コーポレート・ガバナンスの強化も実践していきます。
そして、何より食を扱う企業グループとして「安全・安心」を第一に、高品質で安価な商品を提供し、長期スタンスで、お客様及び株主様の期待に応えられるよう精進していく所存です。