使って楽しいスマホアプリを通じて、ユーザーの生活に「笑顔をもたらす」──株式会社エディア 代表取締役社長CEO 原尾 正紀
株式会社エディア
証券コード 3935/東証マザーズ
代表取締役社長 CEO
原尾 正紀 Masanori Harao
よく目にするテレビCMの多くがスマホのゲームアプリ。多額の広告費用を投じても儲かる市場であると同時に競争も激しい。スマホ向けアプリを提供するエディアはアキバ系コアユーザーに向けたコンテンツに特化することで競争に巻き込まれず、安定した収益を上げるビジネスモデルを確立している。
(取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久)
携帯電話向けサービスの経験がスマホ時代に生きる
――企業ビジョンは「モバイルを通じて人々の生活に笑顔をもたらす」です。どのような事業を展開しているのですか。
原尾 企業ドメインを「モバイルサービスビジネス」と定め、設立当初は1999年にスタートしたiモード(NTTドコモのサービス)向けのライフサポートサービスを提供していました。ライフサポートとは「超らーめんナビ」のような実用系サービスのことです。2010年頃からモバイルの主力が携帯電話からスマートフォンへ移り始めたことから、当社もライフサポートサービスに加え、ゲームサービス事業を立ち上げました。
――スマートフォンの本格普及から約6年が経過してゲームサービス市場は飽和状態を迎えているのではないですか。
原尾 国内のスマホコンテンツ市場は約1兆3000億円といわれており、約9,000億円を占めるゲーム市場は競争が激化し飽和状態を迎えています。一方でライフサポート市場は約850億円まで拡大し十分な市場規模に育ちました。こちらはプレーヤーが少なく、今後も成長が見込める分野です。
――iモードからライフサポートサービスを提供している点が強みでしょうか。
原尾 iモードでは当初、着メロのようなエンターテイメント系コンテンツを入口としてユーザーが増え、ライフサポートへ移行していきました。スマホでも同じ事が繰り返されると予想していて、現在提供している「MAPLUS+」(マップラスプラス)などのアプリにはiモード時代から蓄積してきた技術やノウハウが投入されています。
アキバ文化をアプリ化し、購買力のあるコア客に提供
――モバイル業界は変化の激しい業界ですが、どのようなビジネスモデルを採用しているのでしょうか。
原尾 この業界で生き残るポイントはポートフォリオの豊富さにあると考えています。経営者は未来を予測しながら経営をしていますが、正確に予測することは非常に難しく、極端に言えば1年先のこともわかりません。そのためにポートフォリオによって“分散投資”する必要があります。サービス・ポートフォリオとしてゲームとライフサポートがあり、それぞれの事業構造がアライアンスビジネスと自社ビジネスで構成されています。自社ビジネスだけでは業績の変動幅が大きくなりがちですが、アライアンスビジネスと組み合わせて固定収入に変動収益を上乗せすることで、リスクを抑えつつ安定成長が図れるのです。
――具体的なサービスについて教えてください。「MAPLUS+」という名前が出ましたが、どのようなものですか。
原尾 「MAPLUS+」は案内音声を好きな声優に変えたり、画面をキャラクターの世界観にあったデザインに変えることのできる基本無料のスマホ向け徒歩・カーナビアプリです。ナビを使いたいお客さま、アニメ声優ファンのお客さまにも楽しく使っていただける提案をしています。このアプリには当社が創業当初から蓄積してきたカーナビ技術やAI技術など高度な技術が使われています。
――カーナビと声優の組み合わせはコアユーザーを獲得しそうですね。
原尾 アキバ系コンテンツに力を入れて、購買力の高いコアユーザーさま向けのサービスを増やしていく方針です。
IT関連企業は東京・渋谷や六本木に本社を置くことが多いのですが、当社は創業当初から神田エリアにとどまっています。それは当社のコンテンツに関連した文化の発信地である秋葉原に近いためです。そのおかげでアキバ文化に慣れ親しんだ人材を獲得でき、コアユーザーさま向け商品の開発に役立っています。
スマホの「次」を見据えた新規事業に資金を投入
――どのような社風なのでしょうか。
原尾 社員の9割以上がクリエイターで、20代中心ですが、ベテラン社員も多く在籍しています。開発はボトムアップ型で行われ、立候補すれば新人でもプロジェクトマネジャー(PM)になれます。ランニング・ウォーキング応援アプリ「MAPLUS+ランニング」を社内評価する時はPMが「ジャージを着て集まってください」と声をかけて、皇居周辺を走りながら評価をしていました。
――「MAPLUS+ランニング」はカーナビの技術を応用したものですか。
原尾 そこが当社の強みで、「こんな商品を開発したい」というアイデアを実現する技術をモジュール化し、資産として蓄積していることです。蓄積してきたモジュールを組み合わせることで、短期間、低コストで信頼性の高いアプリを開発できます。
――その技術資産はスマホの次の時代にも役立つのでしょうか。
原尾 スマホの次は身に付けて使うウェアラブルデバイスや、ネットワークに常時接続して情報を収集する自動車“コネクティッドカー”の時代になると予測していますが、当社はその変化にも対応する準備を進めています。上場の狙いも人材の獲得と新事業展開のための資金調達にありました。
――業績予想と株主還元について教えてください。
原尾 2014年2月期から3期連続で増収増益を続けていて、2017年2月期は売上高15億円(前期比18.9%増)、営業利益2億1500万円(同32.5%増)、経常利益2億円(同27.4%増)、当期純利益1億7400万円(同10.1%)の4期連続増収増益を予想しています。現在は会社が成長過程にあり、新規事業に資金を必要とするため当面は内部留保を優先し、早い時期に配当を実施したいと考えています。
私の理想は、「株主さま=当社のユーザーさま」という形で会社を育てていただくことです。そのためにも個人投資家さまを大切にしたいのです。