教育⼒により⾃社創出したIT技術者を技術レベルに応じたプロジェクトに配置──株式会社セラク代表取締役 宮崎 龍己
株式会社セラク
証券コード 6199/東証マザーズ
代表取締役 宮崎 龍己 Tatsumi Miyazaki
社名の「セラク」の語源は「静楽」にある。静は大河を表し、大きく強く成長していくことを願い、楽は心の円満な状態を示している。IT分野は技術トレンドが専門的であるため、投資家には理解が難しそうに⾒える。そこで宮崎龍己社長に他社とは差別化された事業内容や成長戦略を聞いた。
(取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久)
教育により自社創出した技術者を三層で活用するモデル
──大手企業を中心にシステム開発やITインフラ、ウェブ構築などのサービスを提供しているようですが、どのようなビジネスモデルなのでしょう。
宮崎 当社は、よくあるシステム開発会社・ソフトハウスと見られることがあるのですが、それらとはビジネスモデルがまったく違います。
当社では「IT技術教育(人材育成)によりビジネスを創造し、社会の発展に貢献する」という経営方針にあるように、自社での教育・人材創出に強いこだわりを持っており、「IT運用プロジェクトへのアサイン」「高度かつ複合的なソリューションへの参画」「新規ITビジネスの創造」の三階層で技術者が活躍できる仕組みを整えています。
当社ではIT人材教育が充実しているため、他社ではできない「IT実務未経験からの人材育成」が可能です。そのため、毎月数十人のエンジニア候補を正社員として採用し、約2ヶ月の教育・研修を施します。
この時点ではまだ高度な業務に就くことは難しいため、既に安定運営フェーズに入っている大規模システムやITインフラの運用監視、大手企業のウェブマーケティング運営等のプロジェクトにアサインされ、業務経験を積んでいきます。
これらの業務は95%以上が長期継続することを前提とした業務のため、IT技術者を創出すればするだけ積み上げ継続型の売上に繋がっていきます。
その後、経験と技術スキルアップに伴い、付加価値が高い課題解決型のプロジェクトを担当します。当社はITインフラ、情報セキュリティ、スマートテクノロジー、デジタルマーケティング、IoTといった広範かつ先進的な技術分野を担っているため、こういったプロジェクトに参画することで、目の前の顧客の課題解決だけでなく、未来の社会の問題をITで解決する力を身に着けていくことが可能です。
そして、習得した技術を活用して新規ITビジネスの創造にチャレンジすることで、更に大きな付加価値の創出や社会の問題をITで解決していくことに携わっていきます。農業IoTサービス「みどりクラウド」もこのように生まれてきています。これらの業務は、先の運用業務に比べると安定性は低いですが、付加価値が高いことや人数に依存しない業績成長が期待できます。
──具体的にはどのような事業を展開しているのですか。
宮崎 ITインフラ事業(ITインフラの設計構築・運用保守)、スマートソリューション事業(ウェブシステム開発、スマホアプリ開発)、ウェブマーケティングコミュニケーション事業(WEBサイト運営・デジタルマーケティング等)の主要3事業に加え、IoT事業として農業IoTサービス「みどりクラウド」を展開しています。主要3事業は10年以上の業歴と実績を有しています。
──IoT事業で提供している「みどりクラウド」とはどのようなものですか。
宮崎 「みどりクラウド」とは、農業用ハウス内の環境を計測するセンサーを搭載したみどりボックスを通じて、ハウスの中の状態を離れた所から確認する温室内環境遠隔モニタリングシステムですが、単なるモニタリングではなく、蓄積したデータの活用によって農家の生産性を向上させることができるクラウドサービスに進化しています。そこで培った技術は、今後様々な産業分野でIoTによる生産性向上に役立てるなど、IoT分野でのソリューション展開に活用できると考えています。
新人を育てる財務基盤と強い営業力が模倣を防ぐ
――新人を育てるより中途採用した方が時間も手間もかからないのでは。
宮崎 経験豊富で優秀なIT技術者を定期的に何十人も採用できるのであればベストですが、現実には不可能です。そこで当社は未経験者を採用して教育を施すビジネスモデルを確立したのです。
このビジネスモデルを持続させるには、人材創出のための先行投資が継続できる資金力と参画するプロジェクトを確保する営業力、そして採用力を兼ね備えていなければなりません。これは容易ではなく、結果的に資本力と人材に乏しい中小IT会社に対する参入障壁となり、顧客からは安定的に人材を創出できるパートナーとして評価されています。
――教育プログラムが重要ですね。
宮崎 初期教育の充実はもちろん、永続的な教育プログラムとして「セラク情熱大学」があります。新人時代の技術の勉強や資格取得のための教育で終わるのではなく、継続して勉強してより高度な技術、最新技術を身に付ける必要があります。それを「セラク情熱大学」で学ぶことができます。同時に人間力を高める教育も行います。人間力とは隣の人、周りの人、あるいは会社、社会とともに良くなる道を見つける力と定義しています。
――今後の成長戦略を教えてください。
宮崎 まず人的価値の最大化を目指します。上場により知名度が向上したことを受けて、人材戦略をより拡充していきます。特に高付加価値を生む可能性が高い理系の新卒者の採用を強化し、教育・研究開発機能へさらなる投資を行います。これをベースに3つの戦略によって成長を実現します。それは既存事業分野の規模拡大、ビジネスモデルの横展開、新規ITビジネスの創出・成長です。
既存事業分野の規模拡大では営業地域の拡大や更なる採用強化による人員増を目指します。ビジネスモデルの横展開では成長可能性が高く、需要変化が起こりやすい次世代領域としてAI分野やビッグデータ分野、情報セキュリティ分野などを想定しています。IoT分野は将来の成長を期待している段階ですが、まずは「みどりクラウド」の普及によって日本の農業にIoTでの生産革新を実現させていきたいと考えています。