本庄の大クス
写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
JR築城駅より南西方向に10kmほど入った、緑豊かな田園地帯に立つクスノキの巨樹です。下本庄集落を通る県道からも雄大な樹冠がよく眺められ、すぐそれとわかるほどの大クスです。大楠神社の陽だまりのような明るい境内に、どっしりと根を張っている姿は圧巻の一言。日本一と言われる鹿児島県の蒲生の大楠よりも、根回り部分以外はこちらの方が大きく重量感があるようにも思えます。明治34(1901)年、洞の中で焚かれた火が引火し、大半が焼失してしまうという痛ましい火災が発生しましたが、奇跡的に芽が吹き出し、徐々に樹勢は回復し現在の姿まで復活してきました。大楠神社参道側より望むと大きく根を張り、クスノキらしい重量感ある姿ですが、裏に回ると火災によって樹皮のほとんどを失った大きな空洞が目に飛び込んできます。空洞内には現在も真っ黒に焼け焦げた部分が残っており、ほとんど半身だけで生き延びていることがわかります。
この大クスにも樹木医らの手によって平成21(2009)年より治療が施されました。延べ6年をかけて根元の土の入れ替え、支柱などの改良を行いました。効果はすぐに現れ、明らかに葉の緑も増え生き生きとした表情に映るのは頼もしい限りです。
【DATA】
福岡県築上郡築城町本庄1641-1
幹周/20.35m
樹高/22m
樹齢/1,900年
国指定天然記念物
(Profile)
たかはし・ひろし。1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて29年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。ホームページはhttp://www.kyoboku.com
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