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ジャパニーズインベスターの記事をネットで配信、投資家ネット

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2015-01-26

逆転の 投資環境 ──デフレからインフレへ (1/2)

長年しみついたデフレの常識に振り回される投資家

 長いデフレ期間の影響を受けて、私たち投資家の心理はいまだに脱出できないでいます。しかし、政府が目論んだように、いつの間にか周りの環境はインフレ時代に入っており、このままインフレ基調で推移したとすると、私たちは投資をする際に大きな誤解や錯覚を持ったまま、いつまでたっても古い秩序や価値観から抜け出せずに、振り回され続けるでしょう。

 デフレ時代には物価をはじめ、株価も金利も下がり、また為替も円高になりました。しかし、インフレ時代になると、この傾向が逆転します。つまり、物価も、株価も、金利も上がり、かつ円安になるのです。ただし、この転換がスムーズに行かなければ、絵に描いたようには変化しません。

 もともと政策主導のみでは、デフレがインフレになったり、逆にインフレがデフレになったりはしないものです。そんなに国家経済のかじ取りは簡単なものではないのです。

環境が変わっただけなのか、それとも価値観の転換か?

 今回、政府が進めるアベノミクスの中で、日銀は2%のインフレターゲットを設定しました。インフレになれば、株価も上がり、所得も増え、また消費も活発になると踏んだのです。ところが1億2750万人の国民は、いまだ所得が増えるのを実感できていません。したがって、いくら消費を増やそうとしても、その前に横たわった増税というマイナスの政策のインパクトにやられ、消費を控えてしまいました。イソップ寓話の「北風と太陽」にあるように、北風が吹いてきたので、厚着をして身を縮めてしまったのです。

 今回のインフレ期待の中で、どうして金利だけは上がらないのでしょうか。金利が上がらないのは、お金に対する需要が足らないからでしょう。つまり、この国はいまだ投資を増やしたり、輸出ドライブをかけたりしたくなるムードにはなく、《守り重点指向》というデフレ下での経験を今でも引きずっている人々が多数いるということが分かります。

 アベノミクスの最大の効果は、株式市場に直接影響を与えた、いわゆる「資産価値の増加」をもたらしたということです。その中には多数の外国人投資家も混ざっています。しかし、その浮かれ気分は活発な短期売買を呼び覚ましたものの、思わぬ環境変化に見舞われて、私たち投資家は投資の道標を見失ったかのように見えます。原油価格の急落、急速に進む円安、世界経済を牽引してきた中国経済の後退、ロシア圏での騒動、日本のポジションの好転、度重なる天変地異など、私たちの頭の中では整理しきれないほど大きな変動が起こっています。

 こうした短期の循環変動の中に、長期の構造変動が見え隠れしているのです。たとえば、企業と国家の最大のコストとも言われる原油ですが、今やシェールオイルが生産され始めて、原油に起因する国家関係、パワーバランスが崩れ始めてきました。原油が国家収入の中心を占めるロシアのパワーは、急速に弱体化してきています。今回で3度目のルーブルの暴落ですが、シェールオイルがこれからの燃料の主力ともなれば、相対的にロシアは立ち直ることができないほどの打撃を受けます。シェールオイルの存在は、国家経済の中でも最大の目玉ですから、最大規模のコスト低下という「富の移転」が、日本やヨーロッパ主要国の地位を向上させはじめています。

原油価格の暴落がもたらす世界的パワーバランスの変化

 2014年後半、海運株や運送株が大幅に値上がりしています。これらの事業にとって輸送のコスト、つまり原燃料の価格は事業の成否を左右する根幹を成しています。また、運送業界はM&Aも盛んになっています。鋭い投資家はいち早くそこに目を付けたのでしょう。ともあれ、いつも積み荷を一杯積載して全国を走り回るのが命の運送業界では、規模を大きくすること自体が夢だったのだと思います。

 原油価格を40年以上見守ってきた私には、今回の乱高下もまた「相場だから」と、あまり心配していません。どうせ安定はしませんが、一つの目途として、価格は需給が交わるレベルに収斂すると思います。それは同時に掘削コストに近いところでもあります。それ以上相場が下がると、掘削してもマイナスになって、業者は井戸にふたをして掘削をやめてしまうのです。そうすると供給が減ってきてまた価格が上がり始めるからです。

 もしも、私のいい加減な予測を許してもらえるのであれば、そのレベルは現在65ドル近辺ではないかと思っています。LNGとか多くの資源が原油の価格にスライドして取引されている現状からみれば、原油価格の下落は消費国にとっての朗報に違いありません。

 エネルギーの世界に長い間君臨してきたOPEC(石油輸出国機構)やロシアなどは、いまや相対的に力を失ってきています。代わって力を得てきたのは、地下に100年分ともいえるオイルシェール(油母頁岩)を抱えたアメリカでしょう。それこそ長期的なドル高(逆に慢性的な円安)を支持する人たちの理論の支えになっています。
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