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ジャパニーズインベスターの記事をネットで配信、投資家ネット

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2016-02-09

投資の友は犬

木田知廣/作 野村俊夫/画

マネーカレッジ代表 木田 知廣
(Profile)
きだ・ともひろ。ラジオ出演や執筆で活躍する他、ストーリーを駆使して面白く投資を学ぶセミナーが人気を博している(サイト上から先着順で申込可能)。http://www.money-college.org

金持ち父さんのビジネスパートナー

この雑誌の読者なら、ベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』を読んだ人も多いでしょう。その中に、こんなエピソードがあったのをご存じでしょうか? 不動産で財をなした著者のロバート・キヨサキ氏の元には様々な投資話が持ち込まれるようになったのですが、一見オイシイ儲け話に見えてもあわててゴーサインを出さないように、ある「儀式」をしているというのです。それが、ビジネスパートナーに相談するというもの。イケイケな気分でおカネを突っ込むことなく冷静に判断できますし、投資話を持ち込んだ人に断りを言う際の言い訳にもなります。「私は良いと思ったんだけど、ビジネスパートナーが賛成しないんで……」なんて。もっとも、その「ビジネスパートナー」は、実はキヨサキ氏の飼っていた犬だった、というオチが最後に付いてくるのですが……。

 でもこれ、意外と冗談ではないかもしれません。実は最近は考古学の進歩で、犬と人の関係は私たちが思っている以上に深いことが分かってきています。いわく、人類を人類たらしめているのは、実は犬だったのではないか、という説です。聞いてみるとたしかに、投資の際に犬に相談するのもアリと思えるはず。

 話は人類と犬が初めて出会った太古の昔に遡ります。ご存じのとおり人間は、肉体的能力では自然界の中ではレベルが低く、生存するのもやっとのことだったでしょう。獲物を狩るための牙もなければ爪もない。人類発祥の地の緑豊かなアフリカであれば、木の実や野草が食べられてそれでもよかったのですが、世界中に広まる過程では、大きなハンデを背負っていました。それを乗り越えさせてくれたのが、犬。現代でもそうですが、狩りのときに犬がいるといないとでは獲物の捕獲量に大きな差が出るそうです。犬が勢子として獲物を追い込んで人間がしとめるというのが王道パターンで、実際ペットとして飼われている犬だって、もともとは狩猟用に改良されています。ダックスフンドであれば巣穴の中にいるアナグマを狩るために手足を短く、柴犬であれば日本の森の下生えの中も疾走できるように毛が短く……と。鉄砲がある現代の猟においてすら犬は大事なのですから、太古の時代の人類にとっては犬の存在はどれほどありがたかったか想像にあまりあります。犬とタッグを組むことにより、人類は食物連鎖の階層を一気に駆け上がり、地球上でもっとも繁栄する種となったのです。

狩りだけじゃない犬の貢献


 そして、このような犬との共存は、ひょっとしたら人間の心にも変化をもたらしたかもしれません。というのは、一口に人間の心といっても、太古の時代から考えると徐々に進化していっているのではないかという考え方があり、それがこの連載のバックボーンとなっている「進化心理学」です。ダーウィンが唱えた動物の体の進化と同様、人間の心も人類誕生の100万年前から、生き延びるために徐々に変化を遂げていったとの考え方です。実はこの観点から、犬には人間が学ぶべき大切な「心のメカニズム」が隠されていました。それが、「攻撃抑制」というキーワードです。

 犬というのは狩りにも使われるほどの攻撃力があるわけですから、それが仲間同士に向かうと、血みどろの殺し合いに発展しかねません。獲物を狩る前に仲間同士で傷つけあって絶滅なんてなったら目も当てられませんから、群れで暮らす犬は「仲間は攻撃しない」という攻撃抑制の心を進化させてきたのです。え? ホント? だってオレ、小さい頃犬に噛まれたよ? なんて読者の方もいるかもしれませんが、それは人間に虐待されたり、孤独な育ちで群れ社会の掟を学ぶチャンスがなかった不幸な犬。本来の野生に近い状況であれば、犬には自然と攻撃抑制が身についていくそうです。

 一方で人間は、もともと体力的には高い攻撃力がありません。仮に殺し合いになっても、素手の人間ができる範囲なんてたかがしれていますから、心のメカニズムとして攻撃抑制を進化させる必要はありませんでした。でも、人間の頭脳が発達して道具を使うようになった時、この攻撃抑制の欠落は、人類に大きな不幸をもたらします。現代でもそうですが、中立的な調停機関もない太古の時代ならば、虐殺レベルの殺し合いは頻繁に起こったかもしれません。そんな心を持った生物なんて、どう考えても長期的に発展できそうもありません。でも、もし狩りのパートナーとして犬と付き合うようになった人間が、犬から学んで攻撃抑制を心のメカニズムとして進化させていったらどうでしょう? つまり、犬同士は仲間のケンカでも相手に致命傷をあたえるまではしないことから、攻撃抑制の重要性に気付いたら? それが群れを上手にまとめるコツにつながり、やがては狩りの効率がよくなり生存の確率を高め、人類が飛躍的に反映するきっかけになったという仮説はありえるのではないでしょうか。

 ちなみに、これはちょっと余談ですが、私たち人類の直接の祖先はクロマニョン人と呼ばれる種族です。ところが、太古の時代のある一時期、別系統の「人類」としてネアンデルタール人も存在しました。考古学的な調査によると、ネアンデルタール人は脳もホモ・サピエンスよりも大きくて、筋力も強かったなんて言われています。つまり、実はネアンデルタール人こそが地球上の覇者になっていてもおかしくはなかったんです。ただ、ネアンデルタール人は、犬を飼っていませんでした。なので、仮説と言うより妄想ですが、犬から攻撃抑制を学ぶことがなかったネアンデルタール人は、内輪もめが高じて絶滅の道をたどってしまった……なんて事も考えられます。

投資も攻撃抑制で


 さて、ここまで来ると、冒頭に紹介した金持ち父さんのエピソードも、ちょっと違った印象で目に映るかもしれません。人類に攻撃抑制を教え、発展のきっかけを作った犬の存在はありがたいものですから、ご自身も投資の時には、思わず相談したくなるでしょう。現代版の「狩り」とも言える、いい銘柄の発見や投資タイミングを見極める際には、イケイケではなく攻撃抑制をしたほうが良さそうですから。え? マンションで犬を飼えない? それなら、インターネット上の犬の動画を見るだけでも、心が安らぐかもしれません。

【参考文献】
パット・シップマン著『ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた』(原書房/2015年)

※本稿は投資に関する基本的な考え方を解説するために作成されたものであり、実際の運用の成功を保証するものではありません。実際の投資は、ご自身の判断と責任において行ってください。
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