家具のネット販売で蓄積したIT技術を越境ECに生かす──株式会社ベガコーポレーション代表取締役社長 浮城 智和
株式会社ベガコーポレーション
証券コード 3542/東証マザーズ
代表取締役社長
浮城 智和 Tomokazu Ukishiro
プライベートブランド(PB)の家具をネットで販売するEコマース事業を主軸とするベガコーポレーション。「ネットの家具屋さん」との印象が強いが、実はEコマースに強い
IT企業という顔も持つ。浮城智和社長に今後の成長戦略を聞いた。
(取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久)
創業初年度から家具のネット販売に手応え
――インターネット上で家具が売れるという手応えを感じたのはいつごろからですか。
浮城 2004年7月に北九州市に資本金300万円で会社を設立し、10月から家具のネット販売を行う「LOWYA(ロウヤ) Yahoo! ショッピング店」の運営を始めました。商材に家具を選んだのは家具輸入商社で営業の経験があったためです。在庫を持たないドロップシッピングという販売方法により初月の売上げが99万円、11月が200万円、「LOWYA 楽天市場店」をオープンした12月が300万円というように増えたことで、創業した年には手応えを感じていました。
当時のお客さまは「ネット販売=価格が安い」というイメージを持っていたので、リアル店舗の値段より安く設定すること、顔の見えないネット販売だからこそお客さまへの対応をきちんとすることを心がけていました。
現在は自社運営サイトの他に、楽天市場、Amazon、Yahoo! ショッピングに出店しています。
――一時、ゲーム事業に参入しています。これは家具のネット販売に限界を感じたからですか。
浮城 本業である家具のネット販売は、すでに軌道に乗っていたため、会社の成長角度を上げるためにゲーム事業に参入しました。ちょうど携帯電話からスマートフォンへ急速に変わり始めた時期で、新規のゲーム開発会社が躍進しており、後発でも勝機があると考えました。
当社は「ネットの家具屋さん」と認識されていますが、実は半分はEコマースの会社です。参入時には、関連がない事業に進出したという批判も受けましたが、ゲーム事業には(アイテムを販売するなど)家具のネット販売で得たEコマースのノウハウが応用できる部分がたくさんありました。
――そのゲーム事業を上場前に清算したのはなぜでしょう。
浮城 Eコマースの部分では関連があっても家具とゲームの製造工程(モノ作り)には、あまりにもかい離が大きかったためです。
また、最近のゲーム開発には1本あたり数億円という高額な費用がかかるわりに投資金額を回収できないケースも多いことから、当社の事業規模を考えると、家具のネット販売に経営資源を集中した方が良いと考え、ゲーム事業から撤退しました。
越境ECが将来の成長エンジンになる
――現在は7ブランドのネット通販専門店を展開していますが、その住み分けはどうなっているのですか。
浮城 基幹ブランドのロウヤにはオフィス家具を求める男性客が多く、そこでラグ(敷物)を販売してもあまり売れませんでした。そこで、女性やファミリー層をターゲットにしたsumicia(スミシア)というブランドサイトを作ったところ良く売れるようになりました。その後、ランドセルや子ども机をメインに扱うLaLa Style(ララスタイル)や高級感のある家具を提供するBAROCCA(バロッカ)など、お客様の属性や嗜好に合わせたブランドサイトを横展開しました。
その結果、各店舗の販売比率はロウヤ6割、その他4割になっています。
――15年には海外に住む人を対象にした「越境EC」に進出しましたね。
浮城 訪日旅行者が国内の店舗で買い物を楽しんでいる姿をよく見るようになりました。では訪日できない人はどうしているのか? そこには巨大な消費市場があり、その人たちに販売するにはEコマースが向くと考え、英語、中国語、韓国語、日本語で商品を探せて免税にも対応したECサイト「DOKODEMO(ドコデモ)」を立ち上げました。ここでは、訪日しなくても日本製品や日本人がプロデュースした製品を買うことができ、化粧品のようなリピート性の高い商品を扱っています。
国内と海外の市場規模や将来性を比較すると、今後は海外市場が中心になることは明らかなので「DOKODEMO」に期待しています。ただ「DOKODEMO」では家具は扱わず、システムと集客に特化しています。私たちが持っているノウハウは家具の企画開発とネット販売のため、ここで扱う商品は他社のものとし、私たちは販売に特化します。
成長に結びつく投資は機会を逃さずに実施
――今後の投資戦略と株主還元について教えてください。
浮城 当社で販売する商品の約9割は自社で企画開発し、提携先である海外の工場で生産するPB商品のため、同業他社と比較して原価率が低いことが強みのひとつであり、ここまで成長できた大きな原動力のひとつでもあります。
そして、当社はまだ成長過程にあり、経営体制の強化など将来の事業規模拡大に向けてチャンスがあれば、今後も積極的な投資を行うつもりです。ただ前年比で営業利益が大きく減るような投資は株主や社員の不安をあおることになるため、実施するつもりはありません。
このようなことから、将来の成長に向けた先行投資的な事業資金を確保するために、当面の間は配当を見送り、いずれ配当を行うとしても財務に影響が出ないと判断した時点の実施を考えています。その間、手堅く着実に会社を成長させ、株主価値の向上を図っていきたいと考えています。
株主優待制度についても、今後前向きに検討をしていく予定です。当社のビジョンは「満足と感動を叶える唯一のEコマース企業」としており、株主様にも喜んでいただけるような優待制度にしたいと思っております。