プロジェクトを成功に導く戦略実行型マネジメントを提供── 株式会社マネジメントソリューションズ 代表取締役社長 髙橋 信也
株式会社マネジメントソリューションズ
証券コード 7033/東証マザーズ
代表取締役社長 髙橋 信也
Shinya Takahashi
プロジェクトマネジメントの実行支援(PMO)という独自の領域で事業を展開するマネジメントソリューションズ。「競合する会社はない」と言う髙橋信也社長に同社の事業内容と成長戦略を聞いた。
取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久
PMOの必要性を認識し専門会社を起業
―― プロジェクトマネジメントの支援に特化した事業とのことですが、起業を考えた経緯を教えてください。
髙橋 私は20代の頃、外資系ITコンサルティング会社に勤めていて、その後、起業する前に一度は事業会社を経験したいと思いソニーのシステム子会社に転職しました。すると、コンサルティング業界では当たり前だったプロジェクトマネジメントという手法が理解されておらず、昔ながらの気合いと根性で乗り切ろうという風潮の中でプロジェクトが進行していました。私はプロジェクトマネジメントの必要性を訴えていたのですが、なかなか理解してもらえませんでした。その中で、プロジェクトマネジメントを直接支援するPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)という機能の設置が必要だろうと考えました。
ある時、大型のプロジェクトでPMOの役割を担っていた際に、コンサルティング会社やSI会社にPMOを支援してほしいと依頼したのですが、彼らは基本的に1つの領域や開発、運用保守、業務プロセスを受注し、その中でオプションサービスとしてPMOをやっているため、PMO単体では引き受けてもらえませんでした。そのため、個人事業主の方にやっていただいたのですが、非常にうまくいった。そのときに、PMOだけに専門特化した事業で起業すれば、大企業のニーズは十分にあるとひらめいたのです。このアイデアが生まれたのが2003年で、そこからアイデアを練って起業の準備をし、2005年に会社を立ち上げました。
―― 大企業が手がけるプロジェクトはどのくらいあるのですか。
髙橋 現在、当社が継続的にお付き合いしている大企業は約40社で、毎月のように増えている状況です。1社あたりの売上高は数兆円という規模。毎年何千億円という投資が行われ、数十億円単位のプロジェクトに分かれています。プロジェクトの数は年間数百、グローバル企業では数千に達します。そのためプロジェクトマネジャーは全く足りていない。そこでPMOを設置しようとするのですが、そもそもPMOの絶対数も足りない。当社のスタッフは180人ですが、こうした多くの引き合いに応えきれない状況がここ5年ほど続いています。
―― プロジェクトの内容は各社各様です。外部の人間でも対応できるものなのですか。
髙橋 基本的にプロジェクトマネジメントというスキルは汎用的なものなので、業種業界はあまり関係ありません。実際に当社では、様々な業界のクライアントを支援しています。
最近では一部専門的領域に踏み込んだ、AI(人工知能)を使った業務改善や新規事業の立ち上げのような、イノベーションを起こすプロジェクトが増えています。当社もその領域に対しては、PMOプラスアルファという施策をもって取り組んでいます。一例を挙げると、企業ではシニアエンジニアが退職する中で、技術の承継が行われず現場が困っている状況が生まれています。そこで、AIを使って技術の承継をサポートするソリューションを持った会社と提携し、プロジェクトを構築していくといった新たな取り組みを行っています。
中核事業のPMOにプラスアルファの専門性を加えるといった多角化展開を、今後の成長戦略に位置付けています。
―― 海外展開では台湾に拠点を置いていますね。
髙橋 台湾の拠点は3年前に設立したのですが、当初から中国へビジネス展開するための試金石でした。現地の人材を採用して現地の企業に対してサービスを提供するというやり方がうまく行き始めたので、これをベースに中国へ進出し、まずは日系企業にサービスを提供する計画です。
優秀な人材を獲得しさらなる成長を狙う
―― 業績は右肩上がりですが、上場を決めた目的はどこにあるのですか。
髙橋 上場の目的は成長を加速させるためです。私たちのこの2、3年の成長に求められる大きな要素は人材です。数十人、100人単位で増やしていきたいと考えています。現在は中途採用が全体の8割以上ですが、中長期的には新卒者の採用を増やしていきたいです。中途採用者の前職はプロジェクトマネジメントの経験者ですが、業態としてはIT系が多いですね。
―― IT業界の方なら炎上案件には慣れていそうですね。
髙橋 それがモチベーションの源泉なのです。現場で炎上案件を抱えて苦労に苦労を重ねてきた人材なので、プロジェクトマネジメントを良くしたいという思いが強い。その思いの強さが当社の強みであり、成功という成果物を出すことが私たちの使命です。
安定的にキャッシュを生み出すビジネスモデル
―― 株主還元については、どうお考えですか。
髙橋 キャピタルゲインとインカムゲインが株主還元とすると、当社は株価が倍々ゲームで上昇していく銘柄ではないと思います。そこでインカムゲインも含めた還元策を考えていきたい。今後の投資戦略をしっかり吟味して、内部留保がどれくらい必要かを見極めて柔軟に対処していきます。
既存ビジネスに関しては、景気のダウンタームに陥っても、プロジェクトは徐々に減っていくので、業績の急激な落ち込み、下方修正は想定しにくく、安定的にキャッシュを生み出すキャッシュカウ的なビジネスになっています。そのため、短期的に私たちのビジネスを見ていただくというより、中長期的な視点で応援していただきたいと思います。